薄ぼんやりと揺れる街灯だけを頼りに走る深夜。
辻を曲がる度に人が立っているような錯覚に襲われて身震いする。
もうずいぶん長い時間乗せている後部座席の男が声を掛けてきた。
「拾ってあげないのかい。」
「お客さんは相乗りになってもいいんですか?」
「構わないよ。どうせ今だって相乗りじゃないか。」
バックミラーを確認した。お客は1人しか乗せていない。
「誰と……」
暗闇の中で男の口元が引きつったように歪んだ。
「昨晩、零時。自分のした事を忘れたか。」
そうだ。
轢き殺してしまった酔っ払いを車に積んだ。
「お前と俺は道連れだ。」