六時半に起きるのが日課だった夫は、少しでも早く起こすと「まだ、なってない」と寝言のようにつぶやくのも日課だった。
もう、この人を起こす朝も来ないのだと思うと、何度でも涙がこみ上げてくる。
花で覆われた冷たい手に触れ、別れを告げると、葬儀屋が厳かに蓋をする。
出棺の時間だ。
釘打ちの石を握り、トントンと蓋を叩くと夫の声がした。
「まだ、なってない」
5秒で読める世にも奇妙なショートショート小説。(ちょっとホラー)
六時半に起きるのが日課だった夫は、少しでも早く起こすと「まだ、なってない」と寝言のようにつぶやくのも日課だった。
もう、この人を起こす朝も来ないのだと思うと、何度でも涙がこみ上げてくる。
花で覆われた冷たい手に触れ、別れを告げると、葬儀屋が厳かに蓋をする。
出棺の時間だ。
釘打ちの石を握り、トントンと蓋を叩くと夫の声がした。
「まだ、なってない」