お客

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駆け落ちのように家を出て一月も音信不通だった娘が、「彼氏」とやらを連れて来るという。

いい歳をした娘である。貞操観念がどうとか野暮な事は言わない。

ただ、何の話もなくフラっと出て行ったことに関しては説教しなくてはならない。

娘にそんな行動を起こさせて平気な男との付き合いも、正直賛成しかねる。

けれども、ホレてしまったものは仕方ない。
とりあえず、ひと言だけでも何か言ってやろうと身構えていたが。

居間に入って来て座卓の向かい側に座ったのは娘1人だけであった。

娘は1人で隣に向かって時々微笑みかけ、私と妻に向かって謝ったりノロケ話を聞かせたりする。

私はただ、呆然と娘の隣の空間を眺めていた。
娘は一月も一体誰とどこで暮らしていたというのか。

「彼の話、ちゃんと聞いてくれてる?お父さん。私たち、一緒になりたいの。」

そう言って、娘は茶色い小瓶を私たちの前に差し出した。

「彼がお父さんとお母さんとも一緒に暮らしたいって言ってる。」

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