お祭りは嫌いです。
雑踏に消える人の声や、下駄が地面を蹴る音、太鼓、細くて高い音色のお囃子。
あれがガチャガチャガチャガチャ溶けあって、何とも言えない気持ちになるんです。
ノスタルジィ?
ああ。そういう風に言うんです?
とにかく、泣きたい気持ちになるんです。
昔ね、弟が祭りの夜に消えたんです。
キツネのような顔をした人たちが、お囃子と一緒に踊りながら向こうからやって来て。
あっと言う間に連れて行っちゃったんです。
後には弟が被っていたキツネのお面だけが落ちていました。
だから、私は、弟がお面を取りに戻ってこないかと思って。
こうやって、キツネに似た人と友達になっては、顔を貰っているんです。
あなたも。