私がよく行く地元の映画館は、どうして潰れないのか不思議なくらい空いている。今日も、ほとんど貸切り状態だ。
私の後ろの方に、お年寄りが何人かパラパラ座っているだけ。
映画が始まり、クライマックスに差し掛かって気づくと、後ろの方からサラサラカサカサという音が一斉に聞こえ始めた。
お菓子を出して食べている人でもいるのかしら。
けれども、そんな音とはちょっと違う。
この音は……そうだな。昔懐かしい試験勉強の時にする音だ。
鉛筆が紙をすべる音。
サラサラサラサラカサカサカサカサ………。
あなた方は一体、そんなに急いで何を学ぼうとしているのか?
映画の内容は、老いた殺人鬼が次々と人を殺して新しい臓器を自分の身体に埋め込んでいく話だけれども。
「ちょっと、うるさいんですけど……。」
暗闇の中で誰にともなく、つい言ってしまった。
音はピタッと止み。
一斉に人が立ち上がる気配がした。