エスカレーターで。
自分の2段上を上って行く女の足を、私はボーッと見ていた。
細いふくらはぎの下に引きしまった足首。
形はとてもカッコいい。
なのに、肌が出来ものだらけだ。
赤いシミ、青いシミ、あちこち傷だらけ。
第一、もうすぐ冬が来るというのに生足で。
引きしまった足首の下には寒々しい裸足のまま黒いピンヒール。
どういう素性の女なのだろう、と想像した。
よくドラマに出てくる場末のキャバレーの女。
そんな物語が出て来そう。
顔はよく見えないが、後ろ姿の足から生活の苦労が見える。
人の後ろ姿は人生を語るものだなぁ……。
そんな事を思いながらエスカレーターを上りきろうとした時。
背中に視線を感じて振り返ると、2段下にブレザーの学生服を着た見覚えのある少女が立っていた。
私だ。
この顔は、学生時代の私だ。
その2段下にはランドセルを背負った幼い私が立っていた。
2段上の女は……。