出口がない

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ルームメイトが姿を消して一週間が過ぎた。

彼氏もおらず、友達も少なく、ほとんど職場とアパートを行き来するだけのような生活を送っていた子だ。

実家にも帰っていないようだし、私にも何も言っていなかった。

ご両親とも相談して、警察に届け出ることに決めた。

出かける支度をしようと鏡を覗く。

と、鏡の向こうから、白い手の平がバンっ! と浮き出てきた。

―― 助けて!

「ええ―― !? ちょっと……どうして、こんな所に! 」

―― 解らない! 汚れていてよく見えないから掃除しようと思って鏡に触ったら吸い込まれて出られなくなった!

「どうしたら出られるの? どうしたら助けてあげられるの? 」

―― ……して!

「えっ!?」

―― 掃除して! 手垢とホコリが被ってて出口が見えない……。

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