2017年、衆議院解散による総選挙は未曾有の台風襲来と重なった。
しかし、台風予報のおかげで期日前投票率がかつてないほど上がったため延期はなく、各地で負傷者が出る中、決行された。
「総理、一大事です。部屋の前でデモの集団が座り込んでいます。」
「部屋ってどこだね。」
「ここです。」
「こんな所まで入って来る前に止めるだろう、普通。」
「それが、止められなくて……あ、もう中に居る。」
「あなたたちは何なのですか!そんなびしょ濡れで……。」
わたしたちは。
昨日。選挙の後に川の氾濫に巻きこまれた者たちです。
テレビも選挙報道ばかりで。
国の危機やお祭り騒ぎに紛れて自分たちの危機に気づかなかったんですよ。
「そんな事はテレビ局に言ってください!」
もう言いましたよ……だから、このデモは今、実況中継されていますよ。
わたしたち、あなたが万歳三唱している間に川の氾濫に巻きこまれたのですよ。
総理。ばんざぁぃ……。
ばんざぁい……ばんざぁい……。
「あなたたちの望みは何なのですか!」
あたりまえでしょう。
人命よりも選挙が大事なお前らを一緒に連れていくことだよ。
こうして、この日、当選した議員は1人残らず蒸発してしまったので……。
「来週、国民総選挙を再び行います。」
「最初から延期すれば良かったね。」