「形見分け」などという風習がありますが、私は亡くなった人が持っていた物をいただくというのは苦手です。持ち主の意識が何かしら残されている気がして。
しかし先日、「他に使い手がいないので」と祖母に言われて、祖父の形見のパソコンをもらってしまいました。自分のパソコンが調子悪くて買い換えようと思っていたところだったので。
祖父はこのマシーンを購入してから急死したので、ほとんど使っていないのです。
電源を入れると、今まで使っていたボロパソコンと違って静かに素早く起動します。
―― おじいちゃん、心残りだっただろうけど、これからは代りに僕が毎日使うからね。
って、喜んでいたのに、どうして売る事にしたのかって?
うるさいんだ。「タイプミスだ」「変換ミスだ」「ゲームなんかやっていないで論文の続きをやれ」ものすごく……口うるさいんだ!
最近はパソコンを立ち上げないと夢に出てくるようになった。こんなんじゃ、恐くて論文に手がつけられない。
今だって、頭の中で声が響いている。
―― 売るの? また一人にするの? おしゃべりしよう?