最近、隣りの家から悪臭がする。
よそさまの臭いには、なかなか文句が言えないものだが、換気するたびにこれではたまらない。
お隣さんは、ご夫婦で60過ぎ。
加齢臭とはこういうものなのかなぁ……。
そのような事を考えていた、ある日のこと。
仕事から帰った時、一瞬、自分の家から隣と同じような臭いがした。
人間は自分の家の臭いにはなかなか気づかない。
慌てて家中に消臭剤を吹きかけたが、家の中に入って慣れてしまえば、消えたかどうかも判別がつかない。
他人の家の臭いばかり気にしていたが、我が家もこんな臭いを放っていたの?
気づかないって、なんて恐ろしいことなのだろう。
2階の窓を全開にして夜のベランダに出ると、町内が見渡せる高台の我が家。
あちこちにポツリポツリと灯りが見える。
昔はこの町も、もっとたくさんの灯りに包まれていた。
町自体が年を取ったのだ。
加齢臭を放っているのは……。